メキシコは世界一のスペイン語話者がいる国です。そしてメキシコでは独自のスペイン語文化が発達しており、スラング大国としても有名です。
日本でもたくさんスペイン語の会話集や参考書が売られていますが、現地では参考書には決して載っていない表現が多く、言い回しとのギャップで「全然理解できない…」ということがよく起こります。
例えば、「パーティに行きたい」と言うときに、参考書では「Quiero ir a la fiesta」のような無難な表現が載っています。もちろん伝わりますが、ちょっとよそよそしいというか慣れていないような印象を受けます。
これがメキシコだと「Quiero echar desmadre」とか「Quiero echar despite」とか「Quiero pistear(飲みに行きたい)」とか言ったりします。全然違いますよね?
この記事では実際にメキシコに3年以上住んでいるぼくが周りのメキシコ人がよく使っている表現や、実際にぼくが使ってメキシコ人と仲良くなった表現などを紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで楽しいメキシコライフを謳歌しましょう!
人には聞けないスペイン語単語はこの本でも学べますよ!
(アイキャッチ画像出典: https://unsplash.com/photos/vZ9TqSm9ZsQ)
そもそもスラングとは
スラングとは「同じような生活体験や利害関係にある人の間でのみ使われる言葉」です。一般的には品のない言葉が多いです。
しかし、スラングを使うことで「え、そんな言葉を知ってるの?」と一気に距離を縮めることができます。駐在などで海外生活を始める際にはスラングを使うと早く溶け込めます。
何度も言いますが品がない言葉が多いので、それなりの立場や年齢にある人が使うと逆に引かれてしまう可能性もあります。また、目上の人に使うのは大変失礼なので気を付けましょう。
同世代が多い職場など、職場やあなたが置かれた状況に応じて使うべきかどうかを考えましょう。
メキシコのスラング文化
メキシコはスペイン語圏ですが、スペインや他の中南米諸国では使わない独自の表現が発達している国です。
「Chingar」という単語から派生した表現や、母親を意味する「Madre」を使った表現は特にメキシコを代表するスラングです。
同じ単語を使っていても、状況によって全く違う意味になることもあるので、この記事で状況に応じた使い方をマスターしましょう!
驚いたときのメキシコスラング
まずは驚いたときにメキシコ人がよく使う表現を紹介していきます。たくさんあるのですが、ここでは4つだけ紹介します。
- Caray
- Híjole
- Chihuahua
- No manches / No mames
Caray
日本語の「からい」と同じ発音です。「あ、からい!」みたいな言い方をよくします。何かに驚いたときや、予期せぬことが起きたときに使う表現です。
僕の部下の女の子は冗談抜きで5分おきくらいに言ってます。パソコンがフリーズしたり、お客さんから厳しいメールが返ってきたりしたときの口癖のようです。
Híjole
スペイン語では単語の最初のHは発音しないので、カタカナで書くと「イッホレ」となります。わざとHを発音して「ヒッホレ」と言ってる人もいます。
これも同じ女の子がしょっちゅう言っています。
Chihuahua
驚きや衝撃を受けたときの表現です。狼狽や迷惑、または諦めの表現でもあります。
これも同じ女の子がPCがクラッシュしてデータが消えてしまったときとかに「チーワーワ!」といつも叫んでいます。
No manches / No mames
こちらも驚いたときなどに使う表現です。
「No manches」は男女問わず使いますが、「No mames」はかなり汚い表現なので、男同士では使っているのを聞きますが、女性がいる場所では避けた方が無難です。
メキシコ人の掛け声スラング
続いて、相手の言ったことや提案に同意したり賛成したりするときに掛け声として使われるスラングを紹介します。
- Andale
- Órale
- Sale
¡Ándale!
「早く」「その通り」「わぁ」といった同意したり相手を急かしたりするときに使う表現です。
何かに誘われたときに「早くしようよ!」とか「ぜひ!」といった形で返事をするときに使います。
¡Órale!
ほとんど¡Ándale!と同じように使う表現です。プレゼントをもらった人がプレゼントを開封したときに「わぁ!いいねー!」のような使い方もしています。
Sale
「Sale」は「了解」のように使います。スペインでは「Vale」というそうです。仕事中でも、「Sale」はよく聞く表現です。
電話での表現や聞き直すときの表現
電話口でよく使う表現や、相手の言ったことが聞き取れなかったりしたときに使う表現を紹介します。
- ¿Bueno?
- ¿Mande?
¿Bueno?
日本語の「もしもし」にあたる表現です。本来「Bueno」は「良い」という意味です。
メキシコで初めて電話回線が開通し、テスト通話をしたときに通話状態を確認しながら通話しており「¿Bueno?(よく聞こえますか?)」みたいに確認をしていたのが由来のようです。
電話に出るときには「¿Bueno?」と言いながら出るのがメキシコ流です。
¿Mande?
「¿Mande?」は相手の言ったことが聞き取れなかったり、「何?」と聞き返したりするときに使う表現です。本来は「何なりとお申し付けください」のような意味になります。
別の言い方では「¿Cómo?(何?)」「¿Qué?(何?)」「Dime(言って)」のようなものがあります。
由来はスペインがメキシコを統治していた時代にメキシコ人がスペイン人に使える際に行っていた名残のようです。「どうぞ私に命令してください」のような形から派生した表現です。
今はそのような意味はないのですが、そうした由来から意識的に使わないメキシコ人もいますし、気にせず使っているメキシコ人もいます。メキシコシティの周辺ではあまり使わず、田舎ではよく使うとメキシコシティ出身のメキシコ人が言っていました。
口癖系のメキシカンスラング
この項目では口癖のように語頭や語尾に付けて使う表現を紹介します。
- Wey (Güey)
- Bueno
- Simon
- Pues
Wey (Güey)
「ウェイ」「グェイ」と発音します。日本でも若者を「ウェーイ系」と呼ぶことがありましたが、メキシコでも同じように若い男の子はしょっちゅうウェイウェイ言っています。
「¿Qué onda wey」「No manches wey」などはしょっちゅう聞く表現です。
Bueno
文頭につけて「まぁ」みたいな意味で使います。Bueno, está bien.のように使って、「まぁいいよ」のようなイメージです。
Simon
「Simon」は「Sí」と同じ意味で英語で言うと「Yes」と同じ意味の少しくだけた表現です。
日本語の「はい」のくだけた言い方が思いつかないんですが、「うん」とか「OK」のようなイメージでしょうか。
ビジネスで使うとくだけすぎですが、友達同士ではよく使う表現です。
Pues
「Pues」も文頭につけて「Bueno」と同じように使ったり、文末につけて「Sale pues(OK、了解)」とか「Vámonos pues(行こうよ、帰ろうよ)」のような使い方をします。
「Pues」自体には特に意味はないので、語調を整えるようなイメージです。
仲良し同士のメキシコ人が使うスラング
この項目では、本当に仲が良いメキシコ人同士が使っているスラングを紹介します。
- Cabrón, Carnal
- ¿Qué onda?
- Qué pedo
Cabrón, Carnal
「Cabrón」は本来は「馬鹿野郎」という意味なのですが、仲の良い友達を呼ぶときにメキシコ人の若い男の子が好んで使う表現です。愛着を込めて呼んでいるので、この場合には侮蔑の意味はありません。
「Carnal」は本来の意味では「血のつながった」とか「肉体の」とか「性欲の」とかといった意味ですが、こちらも友人を呼ぶときに使う表現です。
日本語だと「兄弟」とか「親友」に近い単語で、とても仲のいい友人同士が呼び合う愛称です。
¿Qué onda?
「調子はどう!」とか「元気?」と聞くときの表現で、「¿Qué tal?」と同じ表現です。
「onda」は波と言う意味の名詞です。波はどう?というサーファーのような聞き方で調子を尋ねる表現ですね。ちなみにサーファーだけではなくメキシコ中で若者が使っている表現なのでどんどん使ってみましょう!
ほぼ「¿Cómo estás?」と同じ使い方ですが、こちらの方がくだけた表現です。後で紹介する「wey」と併せて、「¿Qué onda wey?」と聞く人もいます。
回答としては「Bien(いいよ!)」のように普通に答えることもできますが、「Buena onda(最高だよ)」のように答えられるとネイティブっぽいですよ!
Qué pedo
「Qué pedo」も「Qué onda」のように使われる表現ですが、「Pedo」は元々「おなら」という意味なので、より下品な言い方です。
「どうしたの?」というときに使いますが、駐在員の方などは使っても「¿Qué onda?」を使う方が無難です。
日常的に使うスラング表現
この項目では、メキシコ人が日常的によく使うスラング表現を紹介します。
- Por fa / Por fis
- Neta
- Chido/a
- Padre
- Hueva
- Chingón/Chingona
- Pinche
- Pendejo/a
- Crudo/a
Por fa / Por fis
英語のPleaseと同じく「お願いします」を意味する「Por favor」のスラングです。Por faが少しくだけた表現、Por fisはもっとくだけた表現です。
Neta
「マジ?」という意味で使います。「verdad(本当、真実)」のくだけた表現です。肯定でも疑問でも使えます。
「¿Es la neta?」が文法的には正しい表現ですが、「¿Neta?」だけでも伝わります。「ネェタ?」のように「ネ」を強めに発音します。
Chido/a
チド/チダと読みます。人や物などがとても良い状態、素敵だと言いたいときに使える表現です。
参考書などではLindo/aなどが載っていると思います。もちろんLindoなども使いますが、メキシコでは圧倒的にChidoが使われます。
Padre
名詞では「父」という意味ですが、形容詞として使うと「凄い」という意味になります。「このコンサートは最高だ!」のように使います。
名詞を形容詞化して別の意味で使う、メキシコならではの表現です。
Hueva
「Tengo hueva」の形で「面倒臭い」とか「だるい」という意味になります。「huevo」は単体だと「卵」と言う意味なのに全然違う意味になるのが面白いですね。
やりたくないとかやる気が起きないというときによく使う表現です。
Chingón/Chingona
「とても良い」「面白い」「優しい」「信じられない」などの意味で使います。人に対して使われることが多いですが、食べ物や物事についても幅広く使われます。
ぼくの同僚はいつも自分が組み立てた商品を「Está chingón!」と言っています。大体その後クレームが起きるんですが…。そこまで自信が持てる思考法を教えてほしいです。
Pinche
「最悪な」とか「クソ〜」のような汚い表現です。形容詞として「最悪な○○」とか他の形容詞と併用して「クソ〜」のように度合いを高めるように使います。
「この食事はクソまずい」のようなイメージです。
Pendejo/a
「馬鹿」「アホ」などを意味する表現です。思いっきり相手を罵るときには前で紹介した「Pinche」と組み合わせて「Pinche pendejo」などと言うこともあります。
この表現は相当失礼な表現になってしまいますので、使わない方がベターです。本当に仲の良い友達同士で冗談だと相手が理解できる間柄なら使えるかも、と言うレベルです。
Crudo/a
一般的にスペイン語で「Crudo」は「生の」という意味で、「Pescado crudo(生魚)」とか「Huevo crudo(生卵)」のように使われます。
しかしメキシコでは「二日酔いの」という意味もあり、「¿Estás crudo?(二日酔いなの?)」という形で使われます。
メキシコでのみ他の単語の代わりに使う
メキシコには他の国では使わない用法で使う単語がいくつかあります。ここでは4つの単語を紹介します。
- Bronca
- Carro
- Botana
- Camión
Bronca
「No hay bronca」の形で、「問題ない」という意味になります。「problema」と同じ意味で使われます。
「No hay problema」よりも言いやすいからか、ローカル同士の会話ではよく使われている表現です。
Carro
「車」を意味します。車を意味する単語は他にも「coche」とか「auto」とかがありますが、メキシコではよくこの「carro」という表現を聞きます。「coche」もよく聞きますが、「auto」はそれほど聞かない印象です。
ちなみに縮小字の形の「carrito」にすると、台車とかゴーカートのような小さな車を意味します。
Botana
「Botana」は「お酒のつまみになるようなお菓子やスナック」を指します。ポテチとかピーナッツとか柿の種とかのイメージです。
グミ系のお菓子のことも「Botana」と呼んだりします。街中の駄菓子の屋台みたいなところには「Botanas ricas(おいしいお菓子)」みたいに書いてあったりします。感覚的な感じになってしまうんですが、チョコレートとかガムはこの括りに入らないです。
Camión
一般的にスペイン語では「Camión」は「トラック」という意味なのですが、メキシコではそれに加えて「バス」の意味もあります。
「Autobus」という表現もあり、バスセンターのような公共的な施設の名称は「Centro de autobuses」などとなっていますが、日常会話では「Camión」を使うことが多いです。
メキシコ人と仲良くなるためのスラングまとめ
この記事ではメキシコでよく使われるスラングを紹介してみました。
既にメキシコに住んでいる人も、これから駐在等で赴任予定がある方も、こうした単語を覚えて使いこなすと、一気にメキシコ人との距離を縮めることができます。
10代20代の若い世代の会話を聞いていると、スラングが多すぎて何を言ってるか全然わからないことだらけです。ビジネス的には好ましくないものが多いので、親しくない間柄ではない人への使用は控えましょう。
Netflixの「メイド・イン・メキシコ」は今回紹介したスラングもたくさん出てくるのでリアルなメキシコ人の会話が学べますよ!